第六章 代償は屍の山

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 仲裁する立場の人間が一番失点が高かったので、いささか空気が白ける。取り敢えずははっきりと失敗を認めさせたのでよしとして、会議を進行させた。 「その一団ですが、ここより西側十キロ地点を西に向かっております。地区の警備に妨害を指示していますが、さして効果は見込めないでしょう」  秘書役の男が下書きを棒読みする。誰が頂点になろうと彼は秘書のままなのだ。 「部下が追撃をしている。もうすぐ追い付くはずです」  次席が鼻を鳴らして胸を張る。これで被害を与えて追い出せば、昇格が決定的になると。 「甘く見てはならんぞ、奴等はまるで軍隊だ。それも死兵を抱えた」  手痛い結果から忠告を与えるが、全く話を聞き入れる態度ではない。 「死兵ならば我々にも居ます。中将閣下のソマリア軍とはいささか違いますので」  自爆を求めたら志願者が沢山出てくる、確かにイスラムの集団には死兵となり得る素地があった。特に夫を聖戦で亡くした女性は、後を追って自ら命を絶つのを称賛されるほどである。  発言に間違いはないが、配慮も無かった。
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