第七章 キスマヨ要塞戦

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 やり取りを横で聞いていたマケンガ大佐が遠くを見詰める。敵でも味方でもない人物と、こうまでも通わせることが出来るのが信じられないといった感じだろう。 「ロマノフスキー大佐、引越し準備だ」 「掃除は勘弁してもらいましょう。こちらで埋めた地雷の場所を一覧にしておきます」  出来れば全部踏んで貰いたいものですな、無茶な希望を漏らす。高級将校らが余裕なのは良いことだ。 「サルミエ大尉、重傷者を担架に寝かせておけよ。下の港傍に移しておくんだ」 「はい、閣下」 「アサド先任上級曹長、ラスカンボニ旅団の案内を手配しろ」 「わかりましたボス」  撤収準備を行っておく、何か他にしておくことはないかを思案する。それを中断させるような爆音が耳に入る、要塞本体に砲撃が行われたようだ。 「ったくうるさい奴等だ。ラズロウ、マリーの手伝いをさせろ」 「シ ドン・レイナ」  傍に居るボスに短く命令を下す。自らもゆっくりと立ち上がると通信室を出て行った。  ――貫禄充分か。良いボスだ、変な感想だと解っちゃいるがね。
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