第七章 キスマヨ要塞戦

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 廊下を走っていると屋上付近から射撃音が聞こえてきた。素早くラスカンボニ旅団の奴等が防御を交代したのだろう。 「司令、あと二分です」  ハマダ中尉がタイムキーパーをする、すでに半分が乗船していた。 「ビダ先任上級曹長、殿だ」 「ヴァヤ!」  お気に入りの彼に重要な役割を与える、最後に港を離れる部隊が一番の危険を背負うことになる。警戒を怠らずに長距離射程の武器を装備させて、船の後方で構えさせる。  全ての船が沖に出る、空の船が外側になり魚鱗の形をとるとキスマヨを離れていく。ゆっくりと北東へと航路をとる。海の上では島も客人だ、何も言わずに座って居る。 「司令よりクァトロ軍へ通達。臨戦態勢解除、監視のみを残し休息に移れ」  肩の荷が下りたマリー少佐が息を吐く。大分慣れたとは言ってもようやく先日三十歳になったばかり、大勢の他人の命運を左右させるような役職はいつまでたっても胃を締め付けてくるのだった。 「少佐、四時間ほどの船旅です。どうぞお休み下さい」 「ハマダ中尉が先に休め、俺はもう少しこの緊張を楽しむよ」  一つ年下のガーナ人将校に笑いかける、ではお先に、彼もまた笑顔だった。
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