第八章 コンゴの部族民

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「そうか。レティア、ありがとう」 「ふん、それこそ気にするな。あたしゃね、何があってもお前を裏切りもしなければ見捨てもしない」 「解ってる。だからありがとう」  彼女の肩を抱き寄せる、二人の空間に誰も近付きはしない。エーン少佐は隣に立っているゴメスと目で会話をした。これから待ち受ける騒乱、それにどのように対処していくか。  マダガスカルへの入国は派手に、だが公式には秘密裏に行われた。武装集団がやってはきたがすぐに出航した、そう報告される。空港でも出国の手続きは他人名義で通過し、到着した先でも別人扱いされていた。アフリカは未だに発展途上にある、規則よりも札束がルールなのだ。  ――とうの昔に地獄行きは諦めていたが、これを見るとやはり当然だと自分でも思うね。  ルサカからムウルングの港までは延々と陸路トラックだ。アフリカ随一の治安を誇るザンビアで一番の危険集団はむしろ彼らだろう。驚く無かれ、イギリスやフランスと同等の治安が認められているのだ。  だからといって裕福な国と言うわけではない。車両や糧食を外貨で大量に買い上げてくれた彼らに、疑問はあっても感謝をしていた。
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