第一章 自宅は海辺の丘に

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「一人で行けるさ。サルミエ位は連れていくしな」  事務を代行させるために誰かしら必要なので、無難な名前をだした。とはいえソマリアである、危険はついて回る。 「忘れるな、気の緩みは破滅の序章だってことをな」  ――永年犯罪者として警戒をしてきたんだ、俺より遥かに保身に優れているのは疑いようもない。 「済まん、俺が甘かった。手配を頼む」 「そうやって聞く耳を持つのが賢い態度だ。だがお前の意志はそれ以上に大切なことなのも覚えておけ」  有り難い説教を頂いてしまう。他人は何かしら自らより優れたところが必ずある、そう思えば腹立たしいことも身になるものだ。 「俺は簡単には死なん。自ら死を選ぶことは絶対に無い。そう知っていてくれ」  真面目な顔で目を見てそう告げる、永遠の別れでもなかろうにと笑うことはなかった。 「絶対に忘れない。あたしより先に死んだら許さないよ!」  互いの意思を確認する、二人は笑わない。心底真面目に語らっていたのだ。
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