第一章 自宅は海辺の丘に

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◇  母子が空港に見送りにやってきている。マルカに出立するためで、サルミエ大尉が久し振りに姿を現した。 「おうサルミエ、調子はどうだ」 「絶好調ですボス。皆も訓練に打ち込み問題は見られません」  いつしか副官のポジションがしっくりくるようになった彼だが、周りの反応としては何故だか今一つのままである。  元々司令官副官では働きの結果がわかりづらい部分があった。 「こいつのこと頼んだよ。最近弛んでるんだ、ビシッときつく言ってやれ。いいかい、あたしが許す!」 「お任せください。耳が痛いことを言うのも自分の仕事です。更には奥方の許しまであれば、ボスも悔い改めるしかないでしょう」  軍服のサイズが合わなくなって新調しておけと言われたのは最近である。  体を軍服に合わせる、昔ならそう考えていたはずなのだ。 「わかっているさ、全て俺が悪い」  諦めは肝心だと降伏してしまう。このように島を気にしてくれる事実、そちらを有り難く受け入れるべきだと再三頷いた。 「現地での手配は諸々済んでおります、帰着は六日後の予定で」
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