第九章 ルワンダの星

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 伏せたまま敵が迫るのをじっと待つ。その距離が二百メートルにまで迫ったところで発砲を命じた。残りの弾丸が少ないので連射を禁じている、無駄な消費を抑えて何とか対応しようとした。  大隊――四個中隊は左右に分かれて包み込もうとする。右手の側にドゥリー中尉の小隊を一つだけ割いて足止めを画策した。 「各個撃破するぞ! 左手の半数を潰す、進め!」  エスコーラからも左手の側に増援が送られた。十倍の敵を相手に弾も少なく押しつぶされそうになりながらも、必死に抗戦する。 「本部護衛はドゥリー中尉の増援に行け」  全滅を回避するためにもアサド先任上級曹長の小隊が駆けた。ゴメスも同じく薄く広く展開して防衛線を張る。全力で戦っている左翼が互角、右翼はいつ崩壊するかわからない。それでも島は撤退を命じない。  ――ここで逃げては全てが水の泡だ。耐えてくれ!  肘掛に載せている拳に力が入る。微笑を浮かべてはいるが胸のうちがレティシアには解った。慌ててもよい事はない、二人は黙って座ったまま戦闘の推移を見守る。  右翼が押し込まれてくる、左翼も力を失い後退を始めた。だが島は何も発さない。
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