第一章 自宅は海辺の丘に

15/21
前へ
/174ページ
次へ
 イーリヤ少将、それが何者なのか。ニカラグアで突如国籍を得ているが、帰化したわけでも出生したわけでもない。忽然と存在しだしたのだ。それがオヤングレン政権が発足した前後なのが、アメリカの影をちらつかせている。  窓から外を眺める。陸地に沿って航路をとっているのだが、どうにも地形に見覚えが無い。 「サルミエ、ここはどのあたりだろう?」 「モガディッシュを過ぎてかなり経過したと思われますが」  はっきりと答えることは流石に出来なかったが、経過時間とアフリカの角を見かけた時間で大雑把な位置を想定する。  ――いつ着陸態勢に入るんだ?  そう思ってからややして、ようやく徐々に高度を下げると、名前もわからない空港へと近づいていく。別にハイジャックされたような騒ぎも無く、乗員も乗客も平常であった。アナウンスも特に無く、滑走路に向けて減速を始める。 「何処の空港だここは?」 「ソマリアなのは確かですが……」  着陸停止し後列から順番に機を降りていく、まるで初めからここが目的地であったかのように。仕方なく一緒になって階段を下るが、景色が寂しい場所との感想を抱いた。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1657人が本棚に入れています
本棚に追加