第一章 自宅は海辺の丘に

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 他の客が荷物を取りに一箇所に固まる、サルミエがそれに混じって回収しようとする。  ――エスコーラのやつ等も居ないな。  荷物待ちしているうちに警備の一団らしき者がぞろぞろとやってきた。キョロキョロと誰かを探し、島に向かって歩いてくる。 「えー、イーリヤ氏でしょうか?」  人違いを避けるようにやや慎重に本人確認を行おうとする。殺意や敵意などは特に感じられなかった。 「ええ、あなたがたは?」  異変を感じとってサルミエが足早に隣に戻ってくる。面々を見て怪訝な表情を浮かべる。 「ソマリア連邦の空港職員、警備員でして。ルンオスキエ・イーリヤさんをターミナルへお招きしろと命が御座いまして」 「ここの空港名はなんでしょう?」  隣から割り込んで少しでも情報を事前に得ておこうとする。 「ブラヴァ空港ですが?」  ――なんだって!  警備の職員は別に悪意があるわけでもなさそうで、ただの仕事として案内をしようとしているのが解った。 「サルミエ、一報入れておけ」 「ヴァヤ」  彼等にわからないようにスペイン語でそう指示し、なるべくゆっくりと歩くことにするのであった。
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