第一章 自宅は海辺の丘に

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 ターミナルビルへ入ると軍兵を少数だけ連れた中年が待っていた。こちらからも特に殺意は感じられない。  ――何なんだ一体? 「ボス、不通です」  サルミエが首を横に振った。ソマリア軍中将章を輝かせているものだから、その軍服と階級に敬意を表し、島が敬礼した。 「イーリヤ退役少将です」  少しばかり意外な顔をして敬礼で返す。 「ソマリア軍フェデグディ中将だ。突然で悪いが貴官は捕虜になった」 「自分はソマリアと争ってはいないですが、何かの間違いではありませんか」  間違いでそんなことは言わないのを承知で抗議をする。したからと結果が変わることもない、それでも黙って捕まるのは癪なので口にした。 「ふむ。ではこう言い直そうか、イスラムのソマリアの捕虜になったと。だが心配はない、貴官を害するつもりはないのだ」  ――交渉の札にするつもりか。 「自分に選択肢はなさそうですね。外部との連絡は?」 「制限する。暮すに不自由はさせない、それは約束しよう」 「サルミエ大尉、どうやら予定をオーバーしそうだ」 「自分もボスと共に在ります、気長に待ちましょう」  一団はターミナルビルに横付けしてあるジープで何処かへと消えて行くのであった。
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