第一章 自宅は海辺の丘に

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◇  ロサ=マリアが寝たのでテラスから外を眺める。地中海の風景がどこまでも広がっていた。  ――あたしは今、幸せだ。  スイスに居るときから幾度となくそう感じていた。ニカラグアで島が戦争に身を投じていた時も、奴ならば心配要らないと思っていたものである。  ――なんだ、エスコーラの奴らか?  沖からモーターボートが近付いてくるのが目に入った。ふと丘を見てみると、見覚えがない車が幾つかやって来る。  ――これは敵だ! ロサ=マリアを連れて逃げるぞ。  すぐにゴメスが事態を察知して救援に来るのは解っていたが、運転手一人だけの手駒では遅れを取りかねない。  隣の部屋の娘をタオルケットでくるんで紐で結ぶ。取るものも取らずに直ぐ様地下室への扉を開いて駆け込んだ。  家の周りがマシンガンを持った男達に囲まれてしまう。発砲音は七・六二ミリだった。運転手が先制して攻撃したようだ。あちこちで銃撃音が響き、ついにはマシンガンのものしか聞こえなくなってしまう。
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