第一章 自宅は海辺の丘に

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「はっはっはっ、アホ面並べて唖然としてやがる!」  スロットルを絞り上空数百メートルへと飛んでいった。海から陸の側へと方向を変え、完全に追跡を振り切ってしまう。  ジャイロコプター。個人用の簡易ヘリコプターと言えば解りやすいだろうか。 「お、ありゃゴメスだね。全滅は決まったようなものか」  問答無用で襲撃者に攻撃を加え始める。そこが法治国家の一部であることなどお構いなしに。  ――どれだ、あのビルだったか。  飛行距離などさして長くはない、予め決めてあった逃亡先のヘリポートに着陸する。そこはビルまるごとがエスコーラの物で、住人はゴメス直下の部下で固められていた。 「ドン・プロフェソーラ!」  誰が勝手に着陸したかと出てみたら、なんと口もきけないだろうドンのお出ましではないか。 「ゴメスはどこだ」 「ボスは邸宅へと向かいました」 「引き返させろ」 「はい、すぐに!」  ビルの中に入り込み、本来ゴメスが座るべき場所にドカッと腰を下ろす。あまりに風格が違ったので部下も緊張してしまう。
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