序章 世界の裏切り

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「誘拐して条件を飲ませては?」  勢いがある中年がそう意見を述べた。殺すだけでも良いが、上席者の意思を反映させてみる。 「より困難ではないのか?」 「簡単ではありません。ですが抵抗を封じる手立てはあります」  他に対抗手段を訴える者がいないか、少しだけ間を置く。  特に面々が名乗りをあげないので、彼は上申を採用する。  口出しをして功績を掴みに出るか、機をみて転がり落ちる利権を拾いに行くか。 「良かろう。委細は任せるゆえ計画を実行するんだ。もし交換条件を飲まねば、その時には処刑を行う」 「アッラーアクバル」  予言者の息子。最高の師に登るまであと数人と迫った彼が、生きているうちに階段をかけ上がるには、何か大きなことをなす必要があった。  もし計画を成功させた場合、実行した者を引きあげても文句を言わせない。目で皆に釘を刺してゆく。  迷惑極まりないが、島にその白羽の矢が立った瞬間である。その頃彼は地中海の海辺で平和を堪能している真っ最中であった。
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