第三章 自由区域マルカ

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 オリヴィエラに説明しろと視線を向けたので口を開く。 「ソマリア軍、アルシャバブ、ディギル氏族です。軍とアルシャバブが主導権を握っていて、氏族は強い者に従う姿勢を貫いてます」  政府に類する機関のグループと、宗教に拠った広域グループの在地が競り合っていると言う。宗教側は全域の指導者になるための功績を求め、軍部は狭義の主導権を独占することで合意に達した。短い間に極めて正確な情報をかき集めたもので、レティシアも説明に納得している。 「捕虜にしたと声明を出したのは軍だった。身柄は軍施設内だとして、フェデグディ中将が死ぬとアルシャバブに移されかねないな」  そうなれば容易く害されてしまう恐れがあった。軍が何を求めているか、それが達成されてもまた危険が増す。 「ブラヴァの要求は複数あります。国連やアフリカ連合がモガディッシュではなくブラヴァを正当な政府と認めろ、と」  それはまず叶う見込みがない単なる妄言に過ぎないと皆が解釈した。無理な要求を並べて通したい一つを選ばせる、セオリーと言える。
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