第一章 自宅は海辺の丘に

2/21
前へ
/174ページ
次へ
 皆と別れてから時が流れた。ついこの前のことのようでもあり、昔の話のようでもある。  事後処理があるので暫くはサルミエ大尉が顔を出しに来ていたが、今はたまにしか姿を見せなくなっていた。 「――中米ニカラグア共和国では対立候補が居ないため、パストラ元首相が大統領に無投票で当選しました。大統領は即日閣僚を発表し、各国に祝電の返事を――」  テレビから流れるニュースを耳にしながらテラスから海を眺める。  ロサ=マリアが立つようになったら探すと言っていた自宅、最高の場所を見付けた。  既にそこには邸宅があり、老夫婦が住んでいたのだが体が不自由になり街中に引っ越す直前だった。  渡りに船と売買を打診したら承知してくれたので、言い値を現金で用意すると驚かれたものだ。  ――首相にサンチェス、財務商務大臣にスライマーン、外務大臣にコステロときたか。俺も意外だが本人等はもっとだろうな。  心当たりがある名前が顕著で苦笑いしてしまう。ランデイア大使も本国に戻され、移民居留民大臣に任じられていた。この分ではもっと顔見知りが名を列ねているだろう。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1657人が本棚に入れています
本棚に追加