第四章 宗教都市ブラヴァ

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「自分はどうしましょう?」  年少のフィルが誰に従えば良いかを問う。控え目な性格は一生そのままだろう。 「お前は俺についてこい。氏族の有力者に会いにいく」  すでに繋ぎが取れている地方の名士に面会を依頼してあった。コロラドが持っていた軍資金を餌に、交渉を持ちかけるつもりで。 「頼るべきはラハンウェイン氏族の紹介状ですね」  どうしてもソマリアの勢力としてはそこになってしまう。氏族間の関係からしても紹介状を持った人物を一方的に害するのは考えづらかった。直接それを受け取った側は名声を認められているのだから悪い気もしない。 「一つ道に頼るのは誉められたことではない。時に空虚な張ったりでも無いよりはマシだろう」  刺繍がなされた厚手の紙にアラビア語が書かれた証明書を取り出す。紫のスタンプは税関のモノが押されている。 「それは?」  三人が何なのかと疑問の視線を向ける。 「汎アフリカ連合のソマリア視察委員であると書かれている。俺がでっち上げた」  欧米や他の宗教、更にはソマリアの別地域には敵も多いが、アフリカ連合だけは中立的な機関だと多方面が認めていたからであった。
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