第四章 宗教都市ブラヴァ

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「私はクァトロのヌル中尉です。お話を聞かせていただけないかと参った次第」 「ク、クァトロ! お待ちください中尉殿」  反応を見ていた上席者が報告を聞いて立ち上がる。入り口付近までやって来ると少佐だとわかり、ヌルが敬礼した。 「クァトロ・ヌル中尉です」 「ニカラグア軍グレゴリオ少佐だ。イーリヤ閣下の?」 「イーリヤ少将は自分の主です」  上官ではなく主だと断言したのに驚き、近くに他に人が居ないのを確めて近寄るように仕草で示す。 「本国からは協力を禁じるよう通達があった、これは独り言だ。明後日のマグレブが期限で、要求が通らねばアルシャバブに身柄が移されるそうだ」  決裂を熱望するイスラム教徒の有力筋の発言だから、まず正確なところだろうと補足した。 「グレゴリオ少佐殿、誠にありがとうございます。このご恩はいずれ返させていただきます」 「政府もああは言っているが、本心はすぐにでも動きたいはずだよ。我々はここを離れられないが、閣下をお助けしてくれ」  小声での話を切り上げ「場所違いだ、四番倉庫の事務所は下の階層だ」少佐がとってつけたように返答するのであった。
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