第四章 宗教都市ブラヴァ

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 ――レティアの提案を素直に受けて良かった。些細なことで人生、右にも左にも向くものだよ。 「今日が安息日か、アルシャバブが何かするなら明日だな」  イスラム教徒の安息日は金曜日なので、土曜日には何かしらの決定が下されるはずだ。各国政府も土日がお休みになるならば、金曜日に変化がなければ土曜日を無事に過ごせると考えるのは甘い見通しになる。 「逆に言えば今夜はぐっすり眠れますね」 「お前も大分図太くなったな、パラグアイの時には肩に力が入りっぱなしだったが」  環境に順応したのか元からそうだったのか。妹が卒業する見通しがたち、あとは自力で生きていけると確信したのも大きいのかも知れない。 「アルゼンチン軍を抜けて以来、パラグアイで絶望を味わいました。今の自分は胸を張っていつでも死ねますから」  ――成長したわけか。俺にしたって昔なら消え入りそうな声で境遇を呪ったかも知れんな。 「明日は夜が長くなるかも知れないな」  仕掛けるならばどのタイミングになるか、ざっくりと予測をしてみる。
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