第一章 自宅は海辺の丘に

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 もっとも意図的にやっている部分はあるにしても、大部分は絶対数の不足からである。  パストラ派が最後に勝つのは多くが予測しなかった、ただそれだけなのだ。  ――オヤングレン大統領は他になし得ないことをやってのけた。全てのガン細胞を抱いて散ったのだから。  戦いが終わり世界に速報が流れた。その翌日、行方不明だったオヤングレンの死亡が確認されたのだ。死因は服毒自殺。  彼に付き従った官僚は旗印を喪失し右往左往した後に、パストラ首相に許しを乞うたが許されなかった。  入国禁止の措置がとられ、意思を全うしてみせろと突っぱねてしまったのだ。  北京は興味を失い好きにしろと投げ出してしまい、行き先をなくした彼らがロシアに逃げ込んだのは無節操を絵に描いたような結果と言えよう。  ――それに比べたらオルテガ兄弟の最後は潔かった。ダニエルはロシアへの政治亡命を求め、大統領府の無血開城を提示してきた。  今回は敗けを認めるが政治をしくじったならすぐにまたやってくる、そう台詞を残して。  パストラ閣下もその時は国民に判断を委ねると請け合ったらしいな。
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