第五章 死の囁きは永遠に

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 戦争とはルールに沿って行われるもので、これは私戦に過ぎない。やられたらやりかえす、たちの悪い喧嘩の延長だと。 「あたしはね、世界の平和なんてこれっぽっちも望んじゃいない。やりたいなら好きなだけ殺しあえばいいさ。身の回りの小さな数だけ幸せならそれでいいんだ」  どうだ慎ましくて泣けてくるだろ、努めて明るく接してくる。 「それもまた正義です。俺も近しい人の幸せから願いたいので」 「ま、彼奴はしけた面をするだろうけどね」  馬鹿がつくほど真面目すぎるんだ、こき下ろすが一瞬だけ顔に暗い影を落とした。一生遊んで暮らせるだけの働きはもうしているのに。 「義兄上らしくて良いじゃありませんか。俺は好きですよ」  優しく微笑みかける。決して部下には見せないような顔で彼女も笑う。 「そうだな、変われと言って変わるような彼奴じゃない」  攻撃を仕掛けてかなりの時間が経つが、中々突破出来ずにいる。マリー少佐らが東側に伏せているのは知っていたが、動く気配を見せない。  ――機会を窺っているんだ、本隊が間に合うのか?
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