第五章 死の囁きは永遠に

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 本部から増援を出したようで、エスコーラが一旦押し戻されてしまう。粘り強さがあるわけもなく、攻めと守りでは戦闘力も全く違っているからだ。  ――彼奴が中にいなければ焼き討ちしてやるのに!  中に篭って居られないような手立ては幾つもあったが、無差別に被害を与えるのをよしとはしない。 「大佐は必ず来ます。それまで出来るだけ兵を引き付けるのが最善策でしょう」  目を合わせずに呟く、間に合わなかったなどと終わらせるはずがない。黙って伏せているマリー少佐がその証拠だと確信して。 「ふん、噛ませ犬望むところだ。たっぷり手間賃を請求してやるさ!」  警戒を手配してきたリュカ曹長が戻り際に報告を一つ携えてきた。 「少佐、ブラヴァからアルシャバブの一団が出ました」  徒歩で五百名規模です、予想接触時間は二時間後と端的に示す。 「足止めは必要でしょう」 「んなことはラズロウが勝手にやるさ。あたしらが乗り込むとしたらどこからだい」 「西側です」  彼女と護衛の集団が黙って本部を離れる。司令塔が別にいるので特に混乱は起きなかった。
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