第五章 死の囁きは永遠に

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 ちらりと時計を見るが先程確認してからさほど経過していない。待つのがこんなにも長く感じるとは思わなかった。  ――早すぎると解って仕掛けるのは俺の悪い癖だ。辛くとも我慢せねば!  ソマリア兵が黒服を駆逐して行く、逃げるなと督戦している幹部が背中から味方を撃っていた。敵前逃亡は軍でも死罪なので、それについては特に異論はない。 「少佐」 「まだだ」  戦機が見えないハマダ中尉がはらはらして尋ねるが首を振る。砲撃は続いているが当初のような混乱は見えない。これもエスコーラが敗走しては困るからと早めに指示を出してしまった結果である。  ――エスコーラが逃げ出すわけがないのに、支援が早すぎた。もう失敗は許されんぞ。 「南側から敵が出撃してきました」  勢いを失ってきた寄せ手に逆襲を加えようと、基地から繰り出してくる部隊が見えた。東にも守備隊が居るがこの方面に何故か攻めてこないので、そこから人数を引き抜いて分散配置替えをし始めたではないか。  ――ここだ!
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