第五章 死の囁きは永遠に

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 防壁に二度砲弾が命中した。日乾し煉瓦が瓦解して、そこだけ櫛の歯が抜けたようになる。瓦礫を使って穴埋めしようと、慌てて兵が群がってくる。 「あの一点に攻撃を集中しろ!」  二十ミリ機関砲が重い音を響かせその辺りに向けて砲撃を行う。転がっている瓦礫をバラバラに砕きながら、左右に傷口を拡げていく。機銃は蠢く歩兵に狙いを寄せて死を振り撒いた。 「ハマダ小隊、突撃!」  カスカベルを抱えている先頭の四台が速度を上げて先行する。砲兵陣地には距離を伸ばして対人榴弾に切り替えるよう命じた。 「左右の防壁にグレネードをぶち込め!」 「四十ミリ榴弾砲準備! ……発砲!」  サイード上級曹長の指示で四人が一斉に砲撃をする、上空にうち上がった小振りの玉が割れて、小さな弾を地上に降らせた。角度があるため伏せていても背中に突き刺さり、あちこちでソマリア兵がのたうちまわる。 「黒のスーツは味方だ、攻撃するなよ!」  エスコーラの多くがスーツ姿で戦っていたので、簡単な識別を叫ぶ。いくらか違うのが混ざっていたが、そちらは間違ったらごめんなさいだ。
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