第五章 死の囁きは永遠に

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 東側の瓦礫を前にして、身を隠しながら反撃してくる。カンカンと外部装甲に当たり跳ねかえるが、だからと撃つのを止めはしない。いくら貧弱な装備だとは言っても、一国の軍隊組織である。対戦車ロケットを肩に担いだ兵が現れた。 「ロケットを持った奴を優先してやれ!」  皆が解っていてもそうハマダ中尉が命令する。対抗する火力から潰して行く、戦場の鉄則である。四方にある機関銃座はエスコーラを狙い打つのに没頭してしまい、壁に食い込む装甲車両を見逃してしまっていた。 「瓦礫に構わず突入しろ!」  八輪のカスカベルが車体をうねらせて無理矢理に基地に乗り入れて行く。ベルトを締めていなければ放り出されてしまうだろう上下の揺れに、乗員が舌を噛まないよう顎に力を入れる。  間近で見る装甲車に恐れをなして兵が背を向けて逃げ出す。無感情に七・六二ミリ機銃を連射すると、うつ伏せに倒れた。どこを狙うわけでなく、あちこちにとにかく弾丸をばら蒔いた。一時的な火力が大切なタイミングなのだ。 「弾を惜しまず撃ちまくれ!」
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