第五章 死の囁きは永遠に

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◇  ソマリア海域をアントノフ26改が飛行している。イエメンの地方空港を買収して出撃基地にしたのだ。途中イギリス海上警備艦隊に誰何されたが「クァトロ」と返すとマクガイア少将が「鳥一羽飛んでいない晴天だ」と見逃してくれた。 「機長より各位へ、目的地まで三百秒」  機内にシュトラウス中尉のアナウンスが流れた。愛機を失ってしまった替わりに、空軍司令官が廃棄物処理業者に一機処分を依頼した形で補填してくれたのだ。昇進も勲章も与えられなかった彼への、せめてもの報いと。 「良いか降下なんてのは何度も繰り返したら怪我をするが、一回目は慎重にやるから失敗が少ない。お前たちならやれる、心配はない俺が保証する!」  ぶっつけ本番でパラシュートを背負うことに志願した顔ぶれである。ロマノフスキー大佐には流石に遠慮してもらい、ブッフバルト大尉が降下部隊の指揮を任されていた。バスター大尉も志願しているが、指揮権を譲ってしまった。後進の育成、自らの身の置き場をそこに定めたらしい。ニカラグアでの戦いは、それほどまでに彼の心に影響を与えていた。
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