第一章 自宅は海辺の丘に

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「出してくれ」 「はい、コンソルテ」  運転手がエスコーラの護衛なのは仕方無い。出来るだけ人当たりが良いやつを選ぶことで納得した。  家令を置いた方が良いとも言われたが、流石に召し使いといった柄ではないと見合わせている。 「この前、エーンの奴がクリスタルディフェンダーズと契約したとか言っていたな」 「ああ。紛争地帯専門で人が足りないときには声をかけろって話らしい。オフィスの警備は似合わんね」  ――自力で生活していけるなら、俺なんて忘れてもらって結構だ。プレトリアス族長か、立派なものだよ。  地位を引き継いだ彼はレバノンで一族を率いて島の声が掛かるのを待っていた。  傍に居ると宣言してはいたが、大切な何かは他にもあるはずだと休暇を命令した。  そうでもしなければ帰らないと解っていたので、強引な部分には目を瞑る。 「危険を買うって言うなら食いっぱぐれはしないだろうね」 「そうだな。危険は人種も宗教もなく平等だ」  運と実力次第で結果は自らついてくる、ならば全く心配はいらない。
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