第五章 死の囁きは永遠に

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 古株のクァトロ部員は全員が落下傘降下を可能としている。だが今アントノフに乗り込んでいるのは、半数が新人であった。当然各国の軍隊や警察組織の退役者であるが、実戦は未知の領域というのも少なくない。 「ブッフバルト大尉、降下準備完了です。自分が最後に降ります」  そう申し出たのはビダ先任上級曹長である。何時でも何処でも困難な任につくことを志願する、勇敢さにかけては最高峰の男だ。 「殿は任せた」 「後六十秒で作戦地域、ハッチ開放」  機長の声と同時に後方の扉がゆっくりと開く。軍曹以下が班員を最終チェックし残り時間経過を待つ。  ギリギリの足場に立ちビダ先任上級曹長が皆に声を掛ける「降りたら大尉を探せ!」次々と空中に送り出し、ブッフバルト大尉とは目で礼をする。四人ずつ十回飛び降り、最後に一等兵とビダが空に舞った。  アントノフ26改の後部ハッチが開くときと同じくゆっくりと閉まる。煙が立ち上る地域の上空を通過すると、大きく旋回し、また海を目指して飛び去って行くのであった。
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