第五章 死の囁きは永遠に

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 上等兵が階段を窺う、これといって人の気配は感じられない。防犯カメラのような品は全く見当たらず、質素というか粗雑というか、錆びた階段が下へと続いている。  兵を前に押し出しビダ先任上級曹長がついて行く、ブッフバルト大尉には一等兵が従った。兵が装備しているのも銃身が短いものなので、室内での取り回しがしやすい。 「とにかく下への階段を探すんだ」  囚われの人物が陽の当たる一等地に部屋を与えられているか、はたまた逃げ出しづらい場所に押し込められているか。屋上から三階、すぐに二階へと階段を下る。  ――帰路は屋上というわけにもいかんが、マリーならばきっと正面を抜いてきてくれるはずだ!  一階まで一直線に階段が続いていた。軍施設としてはあまり誉められた造りとは言えない。当の彼らにしてみたら、設計者に感謝してやまないだろうが。 「地下はあるでしょうか?」  最下層が一階では? まさかの見立てを口にする。  ――ここはソマリアだ、技術も費用も失われて久しい、わざわざ掘り返して地下室を作るより、上に伸ばした方が確かに楽だな。
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