第五章 死の囁きは永遠に

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 その盗賊に何時間も攻撃を受けているから説得力など無い。それでも追求はせずに続ける。 「買い付けるはずの品が失われる可能性がありそうだ。中将は無事?」 「無論です。戦闘の総指揮を執ってます」  その時兵士の視界の先に白人がチラリと映った。あれ、と指差し注意が逸れた瞬間、左手で口を押さえ右手はナイフを胸に突き立てた。ドゥリーとフィルの呼吸はこれ以上ない位にぴったりと合っている。  小銃を奪い部屋の扉を叩く。声色を替えてアラビア語で「見張りの交代だ」と呼び掛けた。 「おいおい、俺達に見張りをさせる気か」  ドゥリーははやる気持ちを抑えて扉を開く。真面目な顔で室内に敵が居ないことを素早く確認した。 「閣下、お迎えに上がりました」  驚きの顔を見せることなく、微笑で受け入れる。 「来る頃だろうと思っていたよ。苦労をかける」  書類が詰まった鞄を小脇に抱えてサルミエ大尉が島に従う。丸腰では不安でしょう、とドゥリーから拳銃が手渡された。  エーン少佐らも当たりの部屋だったのを確め、やってくる。
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