第五章 死の囁きは永遠に

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「閣下、我々は孤立しております。脱出にマケンガ大佐を利用したく存じます」 「エーンに任せる。思うようにやってくれ」  詳細を問わずに全てを預けてしまう。強い信頼関係が感じられた。兵はこれが自分達の将軍だと初めて知った、祖父位の年齢だと信じていたが、父親より下だと解り驚く。 「ドゥリー、トゥヴェーは閣下の護衛に就け」  専属にしておき安全確保に努める。一方で残りの六人が三組に別れて三階へと戻る道筋をつける。フィル上級曹長が先頭になり、一等兵を連れて階段を登る。支援にブッフバルト大尉とビダ先任上級曹長が続いた。  二階への踊り場から先を窺う、足音が聞こえた。フィルがゆっくりと這い上がり、手鏡で通路を見る。  ――二人組の兵士だ。 「遠いやつを俺がやる、お前は近くの方を倒せ」  小声の英語で指示する。銃剣が無いので自身はナイフを構えた。ポケットから硬貨を何枚か無造作に取り出すと、階段とは反対の壁側に向けて軽くトスする。チャリンと特有の音を鳴らして床に散らばる。何だ何だと不思議に重いながらも、取り敢えず拾いに行ってしまうのは性だろうか。
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