第五章 死の囁きは永遠に

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 一人目が硬貨に手を伸ばしたところで二人が躍り出る。金額がどうなのかと注視していた兵の目の前に、突如ナイフを持った奴が現れたせいで硬直してしまった。勢いよく喉を掻き切ると声を出せずに、ヒューヒュー空気を漏らしながら膝をついて倒れる。  一等兵は背中に深々と銃剣を突き刺した、悲痛な表情で後ろに首を捻ると、呪うような目付きで見詰めてくずおれた。  後続が階段を上り切る前に、二人は次の踊り場へと足を運ぶ。ビダとブッフバルトで死体を階段に引きずってゆき横たえた。通路からならば発見は遅らせることが出来るだろうと。  三階も同じ様に偵察をするが、こちらには誰も居なかった。  ――南側の部屋だったな。  遠くにだが海が見える部屋、ついでに言えば正面ゲートを視野に収められる、上級者や客に提供される場所なのだろう。  どれかはわからないが、五つの扉が並んでいた。どうすべきか迷っていると「角は下にみられる風習がある」エーン少佐が判断の一つを助言した。ならば答えは出たようなもの、真ん中の扉を無遠慮に開く。
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