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寒い帰り道。ハンとシキは肩を並べて歩いた。
「ヨンからは、チョコ貰った?」
「あぁ、朝一に押しかけてきたかと思えば、寝てるのを叩き起こされ、寝起きに食べさせられました。」
まったくロマンチックな光景でもなく、思わず笑ってしまった。
「頑張って、作ってたのよ?」
「そうでしょうね。美味しかったですから。それに・・真剣に渡したら受け取らないの分かってたから、奇襲を仕掛けたんでしょう。」
ふう、とため息をつきながらも、その表情は嫌がってはいなかった。
「ヨンがそこまで夢中になった人、初めてよ。」
「あんな妹が欲しかったですね。」
「応える事は・・・出来ないの?」
言ってて辛くなった。
ハンは少し緊張した面持ちでシキを見つめると、シキはまっすぐ見つめてきた。
そして、すっと一瞬目をそらし、微笑みかけた。
「出来ません。」
ただ、その一言だけだった。
それだけでハンは、ほっとし、そして罪悪感が高まった。
「送っていきます。」
もしあの時、部屋に呼ばれたら
期待さえしてしまった自分が恥ずかしかった。
ゆっくり歩いて帰ったが、すぐに着いてしまった道のりが少し恨めしかった。
「おやすみなさい。チョコ、ありがとうございます。」
ひらひらと手を振るシキ。
思わず、引き返しぎゅっとシキの手を握った。
「胸・・かしてくれるって、約束覚えてる?」
「・・・はい。」
「かして・・・。」
ずるい人間
ハンは泣きそうになったが、片手でシキに体を支えられ、一緒に部屋に入った。
冗談だと笑うことも出来たはずなのに、その理性にはかなわなかった。
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