st.2

4/5
前へ
/45ページ
次へ
寒い帰り道。ハンとシキは肩を並べて歩いた。 「ヨンからは、チョコ貰った?」 「あぁ、朝一に押しかけてきたかと思えば、寝てるのを叩き起こされ、寝起きに食べさせられました。」 まったくロマンチックな光景でもなく、思わず笑ってしまった。 「頑張って、作ってたのよ?」 「そうでしょうね。美味しかったですから。それに・・真剣に渡したら受け取らないの分かってたから、奇襲を仕掛けたんでしょう。」 ふう、とため息をつきながらも、その表情は嫌がってはいなかった。 「ヨンがそこまで夢中になった人、初めてよ。」 「あんな妹が欲しかったですね。」 「応える事は・・・出来ないの?」 言ってて辛くなった。 ハンは少し緊張した面持ちでシキを見つめると、シキはまっすぐ見つめてきた。 そして、すっと一瞬目をそらし、微笑みかけた。 「出来ません。」 ただ、その一言だけだった。 それだけでハンは、ほっとし、そして罪悪感が高まった。 「送っていきます。」 もしあの時、部屋に呼ばれたら 期待さえしてしまった自分が恥ずかしかった。 ゆっくり歩いて帰ったが、すぐに着いてしまった道のりが少し恨めしかった。 「おやすみなさい。チョコ、ありがとうございます。」 ひらひらと手を振るシキ。 思わず、引き返しぎゅっとシキの手を握った。 「胸・・かしてくれるって、約束覚えてる?」 「・・・はい。」 「かして・・・。」 ずるい人間 ハンは泣きそうになったが、片手でシキに体を支えられ、一緒に部屋に入った。 冗談だと笑うことも出来たはずなのに、その理性にはかなわなかった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加