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目をつぶったままでも、体調が悪いのが分かった。
眼球さえもずきずきと鈍い痛みを訴えかける。
何も用意してないが、吐いてしまおう。
一瞬の迷いを消し、少しだけ顔を横にずらすと、げぽっと意図も簡単に嘔吐できた。
日頃、吐きづらい体質の自分がここまで体調を崩すとは。
嘔吐し、少し楽になった頭が弱音もはいた。
「シキさん、うがいできる?」
誰か・・・いる?
優しい声と軽く頭を支えられ、口に水を含ませてくれた。
「そのまま、吐いて。」
考えることもなく水をだせば、自分がぬれてないことに気づく。
瞼を開けたかったが、鉛のように重く声の主を確認出来なかった。
「ハンさん・・・?」
そうであればいいのに。
願いを込めて呟くと、そっと額を撫でられた。
「寝てて良いから。」
そうか・・・寝ててもいいんだ
シキはその言葉に安心し、再び意識を手放した。
今度はとても温かな気持ちだった。
「ハンさん・・・・。」
夢にまで出てくれてありがとうございます。
感謝の気持ちを込めて、心で呟いた。
それから何時間たっただろうか。
目が覚めれば、外は明るかった。
時計をみれば、朝の6時。
体調は嘘のように良くなっていた。
「全部・・・夢?」
枕元は汚れてない。周りを確認すれば、ベッドの下に着ていた服がキチンと畳まれていた。
ふと自分の服をみれば、違う服に着せ替えられている。
「着替えた??いつの間に?」
かえって着替えた記憶はない。むしろ着替えたにしろ、あの状態でキチンと畳むことなどしないだろう。
シキは夢と現実が分からず呆然としてしていると、がちゃっと玄関の鍵があく音に気付いた。
慌てて中扉をあけ、玄関を見ればコンビニの袋をもったハンさんの驚いた目と目が合った。
「もう起きて大丈夫なの?」
夢ではなかった。
その安心感で思わず体の力が抜け、座り込んでしまった。
「大丈夫!?」
駆け寄られ、肩を掴まれると涙が止まらなかった。
「ありがとう・・・ございます。」
「お礼はいいから、とにかく横になって。」
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