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2月14日午後11時
ハンはシキの家の近くのカフェでぼんやりと外を眺めていた。
悩みに悩んだあげく、結局ここまで来てしまったが、家にいける勇気もなく、電話で呼び出すことも出来ずにいたのだ。
「ヨンは渡したかしら。」
それをシキはどんな思いで受け取るのだろうか。
悶々と考えると、余計に決心が鈍る。
きっとシキから会いたいとは言わないだろう。
分かっていた。気持ちを受け取れないと分かっているからこそ、気を遣っていることを。
ただ、もし周りの目も忘れて強引に引き寄せられ、好きだともう1度言われたら
断る事ができるだろうか
ハンは要らぬ妄想だと頭を振り、財布を取り出し、レジにすすんだ。
やはり帰ろう。
気持ちが揺らいでしまわぬように。
ハンは重い扉をあけ、店をでると、植木の近くで見慣れた横顔を発見した。
扉の音に気づいたその人は振り返ると、一瞬ぱっと笑顔になったが、すぐに苦笑いした。
「こんばんは。」
「シキさん・・なんで?」
「えっと・・帰ってたらハンさんを見かけて、その、気になって待ってました。」
「声、かけてくれたら良かったのに。」
すると、シキは困ったように笑った。
「だって、携帯見つめながら誰かを待ってたようだったから。日が日ですし、特別な人が来るのかと思って・・。」
あぁ、なんて勘違いなんだろう。そんなあなたが来るのを待っていただなんて。
ハンはゆっくりと、手にしていた小さな紙袋を差し出した。
「貰って、くれる?」
「え・・・いいん、ですか?」
おそるおそる、でも嬉しそうに両手でチョコレートを受け取るシキ。
「渡そうか・・迷ってたんだけど、これも縁よね?」
「・・・・・。」
「シキさん・・?」
ぼんやりと見つめてくるシキに首を傾げてみれば、慌てて目をそらした。
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