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「すいませんね」
「救急車はタクシーではありません。
本当に必要な時だけ、電話するようにしてください」
救急車の隊員達は俺に説教してから戻って行った。
アパートの近くに緊急病院があるので、終電で帰ってきた時などによく利用させて貰っている。
俺が救急車で帰宅した事に気が付いた隣の部屋の爺が、説教するように苦言を言ってきた。
「あんた、この前も救急車で帰宅したけど、いい加減にしなさいよ。
あんたのせいで、本当に救急車を必要とする人の、搬送が遅れるかも知れないのだから」
「うるさいんだよ!
手前には関係ないことなんだから、グダグダ言っているんじゃね――よ」
爺は顔を真っ赤にさせ、部屋に引っ込んで行く。
それから1週間程経ったある日、アパートの郵便受けに封筒が入っていた。
差出人はこの地区を管轄する警察署。
俺は首を傾げながら封を切り、中に入っていた紙を引っ張り出す。
紙に書かれていた内容はこうであった。
「○月○日、あなたが不必要な救急車の出動を要請した為に、本当に必要な救急車の要請を行った方が死亡しました。
因果関係は今の所不明ですが、場合によっては逮捕状が出ます。
逮捕状を出されたくなければ、○月○○日までに警察署に出頭してください」
逮捕状? チィ!
仕方ね――なぁ、逮捕状なんて出されたら面倒な事になるから、明日会社休みだし、警察署に顔出すか。
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