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「ねえ、鷹司さんって、もしかして、あの鷹司智樹先輩の親戚か何か?」
転校生の挨拶を無事終えて、ホームルームが終了すると、すかさず、髪をふたつに結ってその先をクルンとカールさせている、目の大きなかわいい子が近寄ってきた。
ものおじしない人懐こい子のようだ。
「あ、うん、そう。今、智樹さんの家にお世話になっているの」
あたしが、用意してあったシナリオ、親戚で鷹司家に世話になっている、を説明すると、まわりの子たちも「え!?」とみんなが振り返った。
どうやら転校生に興味津々だけど、最初は近づきがたいから聞き耳を立てていたらしい。その気持ちはすごくわかる。
「おまえ、鷹司先輩の親戚なのか?家に鷹司先輩がいるのか?」
一人の男の子が興奮気味に近づいてきた。
「うん、そうだけど……」
その子の勢いに驚いていると、最初に話しかけてきた女の子がたしなめた。
「ほら、びっくりしてるでしょ。まったく、男子は野蛮なんだから。でも、すごいね、鷹司先輩と親戚なんてうらやましい!さっき鷹司って苗字聞いて、そうかなって思ったんだ」
智樹さんの知名度に驚いていると、他の女の子たちも集まってきた。
「あの、うわさの鷹司先輩?いいなあ、一度会ってみたい」
きゃあきゃあと騒ぐ女の子たちをかき分けて、さっき興奮していた男の子が再び近づいてきた。
「俺が先だ。俺、サッカー部なんだ。俺に先に会わせてくれよ」
「サッカー部?」
なんでここに部活の話が出てくるのか不思議に思い聞き返すと、
「おまえ、親戚のくせに鷹司先輩の伝説を知らねえのかよ」と憮然と言われてしまった。
「伝説って……。あたし、智樹さんのことあまり知らなくて。なんで、みんな知っているの?」
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