第1章

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家に到着して車を降りると、今朝まで静かだった本宅がバタバタという人の足音で騒がしい。 森野さんも車を降りてきて言った。 「どうやら、なにかあったようですね」 「なにか?」 「とにかく、中に入りましょう」 森野さんと一緒に本宅の大きな玄関を開けて中に入ると、ちょうど智樹さんが廊下を歩いてやってきた。 「やあ、おかえり。どうだった?初日は」 智樹さんはいつもと変わらず、やわらかな笑顔で言った。 学校でさんざん噂話をしていた当の本人に会うのはなんだか、照れる。 「ただいま。すごく楽しかった。とてもいい学校だったよ。それに伝説のフォワードの話をさんざん聞いてきました」 あたしが、少しふざけて言うと、智樹さんははにかんだ笑顔で頭に手をやった。 「まあ、昔の話だよ。でも学校を気に入ってくれて良かった」 二人でなんだか、照れていると、横にいる森野さんがうぉほんと小さく咳払いした。 「お二人だけにしてさしあげたいのはやまやまですが、何かあったようですし、この場を離れるわけにはまいりません。智樹さま。お話中、申し訳ありませんが、状況を教えていただけると助かるのですが」 森野さんがすまなそうに言った。 「ああ、ごめん、そうだね」 智樹さんは気をとりなおして、森野さんに向いた。 「『気』の乱れが出たんだよ。広島だ。明日、俺が行くことになりそうだ」 智樹さんは、真面目な顔になって言った。 「おや、それはひさしぶりでございますね。……何か問題はございますか?」 二人はなぜか、あたしに少し背を向けて、声をひそめた。 「いや、プラス数値で55だ。特に問題はないよ」 それから、智樹さんはほがらかな笑顔で振り返った。
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