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34.終章
「じゃあラスト、行きますよー!!」
専属のカメラマンがレンズを覗き、ピントを合わせた。
ガーデンウェディングに集まった者、みんな揃っての記念撮影が行われる。
「はい、オッケーでーーす!」
それぞれが晴れやかな笑みを浮かべ、笑い声は澄み渡る秋の空に溶けた。
檜は隣りで愛らしい笑みを向ける彼女を見つめ、今日まで歩んだ道のりをぼんやりと思い返していた。
――初めて彼女と出会った16歳の春。
桜色のワンピースを着る幸子に、一目惚れに近しい感情を抱いた。
8つの歳の差に教師という立場で接する彼女。
数年を経て再会した彼女は既に婚約済み。
愛してやまない気持ちを再確認しても、自らの立場を思い返すと、到底幸せになど出来ないかもしれない、と沢山迷い、思い悩んだ。
出会った時から彼女との間には幾つもの境界線が張られ、しかしながら、それを乗り越える度に愛を深めていった。
信頼と共に消えるボーダーライン。
皆の笑顔に祝福された今日。
二人はようやく夫婦となった。
「…これからはもう。ずっと一緒だから」
ぶらり、下ろした幸子の手を握り締め、檜は呟いた。
「一生…。離さないから」
誓いに似た檜の言葉を聞き、幸子はくしゅっと両頬にえくぼを浮かべた。
【FINE】
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