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「アハハっ、そうなんだ?」
うん、と頷き、葛西はオムレツを箸で切る。
「…けど、歌は良いよな?」
テレビを見つめる彼に、思わずキョトンとなる。
「‘FAVORITE’…。サチはあんまり興味無いみたいだけど」
「え、ああ…」
幸子は、そうね、と箸を置き、グラスのお茶へ口を付けた。
「さっきも言ったけど、ボーカルのHinokiって今凄い人気だよな。
そう言や最近、CMにも出てたな…ほら、何だっけ、炭酸飲料の…」
顔をしかめ、思い出そうとする彼に、幸子は軽く言う。
「うん、分かる。フォンタでしょ?」
「あ、そうそう! それ。あんな大企業のCMに起用されるって…。
コイツらまだ10代の後半か、20代そこそこだろ? こんな若いのに凄いよな~」
俺なんかこの歳になってやっとマトモな給料が貰えてるのに、と葛西はため息を吐いた。
「アハハっ、芸能人と比べても仕方無いって」
「そうなんだけどさ」
テレビから賑やかな前奏が聞こえ、若い女の子の歌が始まる。
葛西は、お、と顔を緩めた。
「…あ。ねぇ、慎ちゃん」
「ん…?」
「お義父さん、神前結婚じゃ無くても良いって言ってた?」
画面に目を留めたまま、ああ、と返事をする。
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