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…頼りにされてると いうことなんだろうな…
八月二日、天気晴れ。
放っておくと、いいように使われてると思いそうになる思考を、無理矢理に納得させながら、僕は仕事内容の変化に順応していく…。
レンタカーの最新トラックを用意され、緊急事態対応部長と任命され、仕事の内容は一変した。大きく変ったところは…あの駄菓子屋に行けなくなったことと、店にいる時間が多くなったこと。
緊急事態対応部長とは、つまりは急な注文や、コース配送の忘れ物を配達する、と、そういうことだった…。
キョウコさんに遊ばれ、板長に絡まれ、社長に絡まれ、ケンイチさんに絡まれ…
ついでにいえば、倉庫でイチコさんと出会う時間も多くなり、店内の女性陣とも話をするようになり、
…でも、やはり…人間関係って、面倒くさい…
配達に出る みやチームと ぐしけんチームを、羨ましげに見送りながら、僕はだんだんと人間観察を楽しむようになっていった。
最初におもしろく思ったのが、ぐしけんチームの おかむら。
回りの皆は、気がついていないようだが、僕にはとてもわかりやすい行動をする。めぐさん がそばに来たときだけ、かならず頭をかきながら話す。
…一種の緊張行動だ。
話しかけられるでもなく、会話しているわけでもないのに、めぐさんがそばにいるととにかく頭をかき、背筋ものび、声もはりが出て…見ていてわかりやすい。
ぐしけんの指示どうり素直に働く様は、主体性の無い腰巾着のようにも見えるのだが、めぐさんがそばに来ると、いっそうてきぱきと、声も態度も一変する。
なかなかおもしろい、と僕は続けて観察をしつづけた。
ぐしけん と おかむら はどうやら長いつきあいらしい。兄貴分のぐしけん、弟分のおかむら。ぐしけんの言葉の端々に、マザコンという表現が、おかむらに対して使われていた。
実際見ていると、そんな印象を受ける。おかむらは少しなよっとした態度が多い。
今日一日で、僕はおかむらにこっそりとあだ名をつけた。
サトラレ…
実にわかりやすく、素直で繊細。
主体性があまり無いため、ぐしけんや回りの意見に左右されやすい性格。
…サトラレ君、君で少し、遊ばせてもらおうか…
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