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…テーマは、主体性を持たない男の自立への経路…
頭の中で、色々と構想を練る。
サトラレの、あの主体性の無さは、現状特に問題点ではない。放っておけば、あのまま社会に出て、ずっと主体性の無いまま誰かの指示で働き続けて行くのだろう。それをどうこうしようなんて権利は、僕には無い。
…そう、ただ試してみたいだけなのさ…僕の理論を…
めぐさんの前でだけ見せる、わずかばかりの主体性。おそらくは、本人自身は気付いていると思われるが、めぐさんに対する特別な感情が、起因となっていると考えられる。
ならば、よりいっそうめぐさんへの思いを強させて行ったら、どうなるのか?
少しだけアプローチ、その一。
サトラレのそばに、めぐさんが近付くときを見計らって、誰かをめぐさんと接触させる。当然、男でなければならない。
誰にするか…自分しか思いつかない…。
少々面倒だが、実行してみた。
サトラレのそばで、わざとめぐさんに話しかけ、楽しそうなふりをしてみる。
サトラレの表情が、すこし寂しげに見えた…。
何度かくり返すうちに、サトラレは次第に固い表情で、僕を見るようになって行った。
…面倒ごとは、嫌だな…
その不安は、しかし一人の男の出現で、変化しはじめた。僕が めぐさんに話しかけると、待ってたように話しに入り込んで来るみや…。おかげで、ぼくはこの役から早々に手を引くことができ、サトラレのこわばった表情は、自然 みやに向けられるようになった。
…これで観察に専念できる…
倉庫裏で猫を眺めながらこれからのことを考えていると、あかりさんがミルクを持ってやってきた。
「…めぐと仲いいね、ジャン君」
はやすように 言われた。
「その役は、みやに変ってもらった…。」
頭の中で、色々な構想を練る。
「あきらめちゃったの?」
「は?なにを…?」
「…そっか、じゃあね。」
なんだかわからないが、猫達は満足したようだし、放っとこう…
…さて、このままみやとめぐさんがくっついても、おもしろくないよなあ…
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