第1章

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ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい・・・ 繰り返される謝罪の言葉 度々襲われる鈍痛 ジンジンと痛む頬や耳の向こうから 人の怒鳴り声が聞こえてくる その声の感情は、私を敵視するものでしかなく 私にとってそれは『音』でしかなくなっていた。 何を言われているのか なにがいけなかったのか・・・ もう、その『音』で何かを理解することは出来なくなっており それでも普段 人の感情を読み取るのは、簡単な足し算のように思え 私は、その時の表情や『音』を聞き分けていた。 優しい表情・・・ 優しい声・・・ 笑っている・・・・ 綺麗な包み紙・・・ 箱・・・ そうか、今日は私の9歳の誕生日だった それでも、嬉しいという感情はなく ただ思うのは・・・ 『今は大丈夫、今は大丈夫                             今日は大丈夫』 そう心を確かめる その時、現実に引き戻されるように 背中に激痛が走った 『ごめんなさい、ごめんなさい』 私の声は、どこか体の中から聞こえているような錯覚に陥っていて 顔や頭を両腕で庇うように体を丸めている 『ごめんなさい』の言葉を呪文のように繰り返し この『時』が終わるのを、私はひたすら待つしかなかった。 今、私の目に映るのは 誕生日に買ってもらったスカートと 痣だらけの両足だった そのスカートを見つめながら、涙が止まらなかったのを覚えている そうか・・・ あの頃は まだ感情があったんだ・・・・・
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