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…なんで、こうなるのかな…
さっきまでの感謝の気持ちは露と消え、いま呆れ顔の僕。
女性の別荘で、ケンイチさんとダイゴさんと黒服が、酒を酌みかわしている…。
「まだ単純なのもいるのね。」
ドレスの女性が、そうつぶやいて別室に消えて行くと、黒服が僕に話しかけて来た。
「昼間は悪かった。ついやりすぎちまった。」
「ああ、いいんだよこいつは。すこし頭でっかちだから、考えなしにここまで来ただけ進歩があったって事だ。」
「そうそう。」
…というか、あんたたち、打ち解けすぎ…
まるで古いドラマを見ているように、目の前で男臭いドラマが演じられている。
そんな気分…。
「僕、先に帰ります。車、人のを借りて来ちゃったし。」
「おう、暗いから気をつけて帰れよ。」
「奥さまが注文したら、また来てくれ。こんどは歓迎する。」
そうして、僕はアナクロの三人を残し、車に戻った。
気になるのは、イチコさんの機嫌…。
…勝手に乗って来ちゃったしな…
制限速度無視で帰る僕。
湖畔に夜空が映りこんでいる。
倉庫裏に帰ると、そこにはイチコさんの姿は無かった。
…猫達は、今は散歩に出ているのだろうか、姿が見えない。
バイト寮まで戻ると、湧き上がる喚声。
二階の さちこさんの部屋あたりから、笑い声が聞こえる。
良く聞いてみると、猫の声!?
とりあえず、自分の部屋に帰る僕。
気分直しに、ウィスキーを瓶ごとあおる。
口中に広がる芳香…少ししみる頬。
さっきの光景が、目について離れない。
殴りあう大男二人…。
もう一口、ウィスキーを口に運んだところで、入口のドアが鳴った。
「ジャン君、帰って来た?」
大きな あかりさんの声。
入口をロックしておかなかったので、そのままガチャっと上がりこまれた。
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