1人が本棚に入れています
本棚に追加
「暑いったらないわね!なんなのよ、この暑さは!!」
私の名前は、大束 みちよ。
26歳 フリーのルポライター。
とは言っても、自称のようなもので、今だなんの作品も世に出ていない…。
今年こそはと思い、十数年前の集団神隠し事件を追いかけて、この湖畔の観光地にやってきた。
そう、私の目指すものは、超常現象のルポ。
昔から、不思議なものが大好きで、UFOとか心霊とか妖怪伝説とかを追いかけて来た。
いわゆる、眉唾物だわね…。
でも、私は信じている。
この世には、常識でははかり知れないことがあるんだと!
山間から、湖面に向けて一眼レフのシャッターを押す。
小気味いい音。
湖面が見渡せるこの場所には、長く続く階段が背後にそびえていた…。
「うー、この階段昇るの?嫌だな…」
しかし、登らなければ真実は掴めない。
そう言い聞かせて、私は階段を登る気力を振り絞った。
「はぁ、はぁ、駄目…ちょっと休憩…」
半分も登らずに、へたりこむ自分を情けなく思いながら、携帯電話の電源を入れる。
眼下に広がる素敵な風景を、東京の友人に送りつけてやろうと思って…。
私と同期のその友人は、女だてらに警察勤務の刑事さん。
使えない後輩と、カツラの上司について、いつも居酒屋で愚痴を聞かされる。
そんなあいつに、こんな風景を送ってやれば、少しはすさんだ心も晴れるだろう。
一通メール送信した後、上空から鳶の鳴き声が聞こえたので、それも携帯のカメラで撮り、メール送信。
「前略、私はこんな景色の良いところにおります。あんたも休暇取ってこない?」
送信完了!
「さて、山頂目指して進むかっと!」
気合いを入れ直し、カメラのバッグとそのほかの荷物を担ぎ直して、再度階段を上がっていく。
…三十人以上の大学生が、突然いなくなった事件だものね。きっと何か、超常現象が関係してるわよぉ、こりは! 私の勘に間違いは無い!!
上空を飛ぶ鳶は、三羽。
旋回しながら、気ままに空を舞っている。
私の心も、気ままに想像の世界を、舞い踊っていた…。
最初のコメントを投稿しよう!