霞がかる山裾に揺れ動く心

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「あかりさん、駄目だ…空き室で賃貸に出てるよ…。」 東京のネットカフェで、インターネット検索したところ、江原 悟の住んでいた部屋がヒットした。 築十三年、オートロックつきのマンション。賃料は、25万円… 「江原さんて、稼ぎ良かったんですかね?」 「…みちよちゃん、大屋さんか不動産屋さん、わかる?」 「ええ、もうメモしました。これから行ってみますか?」 「そうね…他に方法無いしね。」 タクシーに乗り込みほどなくして、郊外にある不動産屋さんの前についた。 「…前の住人?半年ぐらい前に出て行ったよ。…行く先なんて、聞いてないね。」 不動産屋の反応は、そっけないものだった。 大屋にいたっては、住んでいた人間の名前さえ知らない。 …ま、東京だし、こんなものだろう… 「…結局、前の住人も違う名前でしたね…」 「ねぇ、みちよちゃん…この人、6年前からここに住んでいたみたいよ…。」 あかりさんが、不動産屋でコピーしてきた賃貸契約の内容を確認しながら言った。 「あかりさん、駄目ですよこんなとこでそれ広げちゃ。本当はコピーだってできないものなんだから…。」 「…宮本君が、訪れたのは…5年前…。この人、ジャン君の知合いかなんかじゃないかしら?!」 賃貸契約書には、佐藤 慎一と名前が書かれている。 年齢は、現在32歳。 「しょうがないな、最後のつてでも頼るか…。」 私は、携帯電話を取り出すとアドレス帳からお嬢の番号をひっぱり出した。 「あ、お嬢。私、みちよ。今日東京に戻って来たんだ。…うん、これから会えない?」 電話の向うで、お嬢はいつもの通り、不機嫌な声でOKと答えた。 「あかりさん、国家権力に頼ってみようか。」 「え?」 「私の友達紹介するから、一緒に来て。」 近くの駅まで向かい、歩きだす私達。 東京の暑さは沖縄に比べ、蒸し蒸しと嫌な暑さだった。 …佐藤 慎一…どこにでもありそうな名前だな…ま、お嬢なら、なにか手を考えてくれるだろう。仮にも刑事なんだし…
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