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先頃、巷で横行する魑魅魍魎に人々は悩まされていた。泣き寝入りするしかない者、法力、法術を持つ者に退治を依頼する者など、組織として個人としても選択は様々である。錫杖を手にしている者は僧か修験者であるという常識からか、男は村人から石切り場で起こる怪異の解決を依頼された。社を建立するための石の採掘作業などが行われていたのだが、ここ数日のこと、昼過ぎになると山中での作業が滞り、遅々として進まない。ただ、石切り場では滅多に見ることのない女の姿が度々、目撃されていたという。 「つまり、人間に化けた石の妖怪だったという訳ですな」 割れた一枚石を運び出すための指示を石工長に出すと、村主は腕を組んだ。魑魅が取り憑いた石をも奉納するらしい。村は里神楽の準備で喧騒に溢れていた。錫杖の男は元々、祭文語りのために呼ばれていたのだが、余計な仕事を行った訳である。偶然とはいえ謝礼は充分に期待できるだろう。ただ、彼には懸念が一つ。
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