第1章

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「あんたって子は、言いたいことがあるのならちゃんと言いなさい!」 かあさんが怒っている。何を怒っているのか、俺にはわからない…。 「なによ、その顔は!いいかげんにしないと、本気で怒るわよ!」 今までも怒ってたじゃないか…。これ以上どう本気で怒るって言うんだ? 夏休みが近くなり、高校の三者面談に呼ばれた後、帰り道の車内でのことだった。 三者面談で、担当の教師はこんなことを言った。 「周りから浮いてます。このままでは、ろくな人生を送らないでしょう。」 そんな事言うのなら、ろくな人生って何だか教えてくれ。世の中の大人はくだらないルールに縛られて、言いたいことややりたいこともできずにいるだろう。なにがろくな人生だ。 だいたい学校にしたって、ろくなもんじゃない。現国、数学、化学、物理、世界史、日本史。今の高校に入ってから、勉強が楽しいと思えなくなった。中学まではあんなに授業が楽しかったのに。 授業中、教師に対して質問が一切できない。教師はただ黒板に文字や記号を書いて、それをノートに写させて、その後宿題を山程出して、はい終わり。 中学の頃はみんなこぞって先生に質問をぶつけた。時々先生も答えがわからない時があって、みんなで一生懸命答えを考えたりもした。それが今の高校ではない。 窓の外に目を向けると、遠く海辺をカモメが飛んでいる。 そんなに大きくない、海辺の町が見渡せる。 綺麗な空に、白い雲が積み重なっている。 「とにかく、あんなこと先生に言われるのは、自分のせいなんだからね。しっかりしなさいよ。」 かあさんは、いつもそう言う。 最後には、しっかりしなさい、だ。 俺の人生がどうなろうと、あんたの知ったこっちゃないだろうに。なんでそんなに、うるさく言うのかな。学校でどんなに浮いてたって、俺の勝手だろう。いちいちクラスに溶けこまなくったって、いいじゃないか。ほっといてくれよ。
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