第1章

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家に帰り着いて、俺は自分の部屋へひきこもった。 お節介な弟と顔をあわせるのが嫌だったし、がさつで自分勝手な姉貴の相手をする気分でもなかった。 かあさんは、家事に急がしそうだから暫くは放っといてくれるだろう。 とうさんが帰って来たら、また一悶着ありそうだ。俺の進路のことで… 今年の正月にお年玉で買ったCDコンポに、お気に入りのCDを入れる。 ベッドにうつ伏せになり、流れて来るメロディーに包まれながら、なぜか俺はさっきすれ違った二人組のことを考える。 …何の仕事をしている人達なんだろう… こんな田舎町でも…いや、田舎町だからか…危ない仕事系の人達も多くいる。中学時代の友達で岩下ってのがいるが、あいつの家はヤクザみたいな工務店だ。この町で一番大きな企業でもある。派手な色のニッカポッカを来た連中が、町の至る所で見かけられる。中学時代の悪な先輩達も何人か世話になっている。 そんな先輩達と比べても、なにか違うオーラのようなものを感じたな。ひょっとすると、どこか謎の組織のヒットマンだったりして…。 我ながらアホなことを考えてるな。そう思いつつも、空想は止まらない。 ひょっとすると、誰かに追われているんじゃないのかな。あの白いスーツ、派手だったな。でもシャツまで白いと、ネクタイの色しか印象に残んねえぞ。はは…。 もう一人のあいつ、腕の傷かっこよかったな。なんだか、歴戦の戦士って感じ。喧嘩とか、強いんだろうな…。 ベッドから起き上がって、窓を開ける。新築一戸建の二階から外を眺めると、遠く海が目に入る。 あいかわらず、カモメの多い海だな。 公一とか義男誘って、また海へ行くかな…。 でもまだこの季節じゃ、水着のおねえさん達には出会えないだろうな…。 何だか突然何もかもどうでもいい気がしてきた。 ふっと、思い出してしまったからだ…。 「このままでは、ろくな人生を送らないでしょう。」 「自分のせいなんだからね。」 あー、思い出したらなんか、全部どうでも良くなって来る。 このベランダから飛び降りても、楽にはなれないよな…二階だし…
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