第1章

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しかたないので、こんなときの為の本を本棚から取り出しページをめくる。 …呼吸法、心身をリラックスさせて、なりたい自分の姿を思い浮かべます… ベッドに横になり、深呼吸をしながら、頭の中で考える。 …右の肩が重くなる…左の肩が重くなる…足の付け根が重くなる…膝が重くなる… すーっと、体から力が抜けていった。 …右の手の平から、暖かくなる…左手も…爪先から、足の付け根にかけて… 心持ち、ぽかぽかしてきた。 …胃のあたりが暖かくなる…だんだんお腹中に広がっていく… 呼吸が落ち着きだし、睡魔に襲われそうになる。 その瞬間を待ち構えて、なりたい自分の姿を模索する。 えーと…うーん…思い浮かばない…。 何になりたいんだ、俺は…。 ふっと、あの二人組の姿が目に浮かんだ。 気ままにあちこちを旅して回る、フリーのスイーパー。依頼されればどの国へでも行き、ターゲットは必ずしとめる。一回の依頼料は莫大な金額で、年に一回仕事をすれば、後は遊んで暮らせる日々。タフな精神と、臨機応変の知恵、そして勇気。ターゲットは悪人だけ。それ以外の仕事は引き受けない、プロフェッショナル。 …阿呆か、俺は…漫画の読み過ぎだ… 気がつくと、そのまま眠りこんでしまった。 姉貴が呼びに来るまで、深く深く、ぐっすりと…。
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