0人が本棚に入れています
本棚に追加
無事一学期の終業式が終わったらしい。
体育館の裏手で、空を見上げながら中の様子を伺っていた僕は、体育館からぞろぞろと出てくる生徒の列に入り込み、教室へと向かった。
…誰も俺のことなんて、気にしてないや…
列の中に入り、皆と同じように歩く自分を、なんだか強制労働で働かせられている囚人のように思い、それはそれでおもしろいなと、ひとり微笑んでしまう。
教室に着くと、あの教師が生徒全員に向かって通知表を配りはじめた。
名前だけ呼び、生徒が取りに行く。
特にこれといった会話の無い状態で、30分程同じ事がくり返される。
まるで囚人だ…。囚人が監督する人から配給を受けている姿だ…。
午後を少し回ったところで、やっとこの監獄から開放された。
「もうこんなところに来るなよ」とかいう送り出しの人はいない。
もちろん家族も、迎えには来ていない。
「…シャバの空気が美味いぜ…」
我ながら良くできた洒落だと思ったのだが、いっしょに笑う友達もなく、俺はそのまま帰宅への道を歩きだした。
バス停まで、歩いて2分。
バスに乗り込み、海を見つめる。
カモメの数は、遠目で見ても数十羽いる。
その中の一羽が、不意に空高く舞い上がり、海に向かって急降下して行く。
カモメの中にも、変り者がいるんだな…。
最初のコメントを投稿しよう!